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酸っぱいコーヒーは母さんの味

268 :無記無記名 :2005/11/19(土) 13:24:08 ID:DZD94Ge+
ばかやろう!!
コーヒーが酸っぱいぐらいでグダグダ言いやがって
酸っぱいコーヒーにはそれなりの理由があるんだよ
どうやら俺が酸っぱいコーヒーを飲んだ時の事を書かないといけないようだな・・

あれはまだ俺がいっぱしのコーヒー通を気取っていた20代前半の気豆の如く青かった頃
俺はコーヒー道を究めるべく日々いろいろな喫茶店に通うことが日課だったんだ
そんな時、車の免許のない母に買い物に連れていってくれない? と頼まれた
でも俺にはコーヒーの方が大事だったから「そんなもん自転車でも恋で行っとけよ」と言い捨て新たな喫茶店を求めて愛車に乗り込むとドゥルルルルルルルと家を飛び出した
そんなこんなでとあるところで雰囲気のよさげな喫茶店を発見し、早速中に入った
カウンター席が6席、あとは2人掛けのテーブル席が1つあるだけのごく小さなところに髭面の熊のようなマスターが印象的だった
ドアを開けて入るのを躊躇しそうになったがここで退いてはコーヒー道は極められねぇと思いカウンターにドカッと座ると「ブレンド」と注文した
するとマスターはこちらを一瞥すると豆を挽いてネルをセットしコーヒーを淹れはじめた
辺りに広がる芳醇な香り
これは期待出来るぞと黙って待っていると程なくしてなかなかこだわりがありそうなカップに注がれたコーヒーと砂糖とミルクが出てきた
俺は通ぶって「ははは、マスター 俺は砂糖やミルクを入れて飲むほどお子さまじゃないぜ」と言うとそのままブラックで一口すすったんだ
するとどうだ、コーヒーの香ばしい香りと苦みとほのかに感じる甘みを期待していた口の中にはただただ酸っぱく渋いだけのとても飲めた物ではない液体が入ってきた
「うぇっ すっぺー なんだよこれ!! マスター こんなんじゃ客こないよ もうちょっとコーヒーの勉強した方がいいぜ」と
言い終わらないうちに目の前に丸太のような腕が迫ってきた

269 :無記無記名 :2005/11/19(土) 13:24:51 ID:DZD94Ge+
ドグァワワワワワン
気が付くと俺は数メートル離れた壁まで吹っ飛ばされ倒れていた
マスターの熊の一撃にやられたようだった
だがなぜ? そこまでかんに障るような事を言ったんだろうかと痛みと混乱で立ち上がれずに板俺のそばにマスターが近づいてきた
人生の酸いも甘いも知り尽くしているようなマスターの眼光から目を反らされない俺
するとマスターが語り出した
「おまえさん、酸っぱいコーヒーにはちゃんと意味があるんだよ。酸っぱいと言うことは酸性ってことだろう? リトマス試験紙の反応を覚える時にこう教わらなかったか? 青が赤に変われば酸性になることから『おかあさん』と」
俺が理解できずにいるとさらにマスターは続けた
「おれは酸味のあるコーヒーをお客様に飲んでもらっておかあさん、つまり母親の事を想い出してもらいたいと思っているんだ。そしてお母さんが歩んできた人生のほろ苦さを感じてもらいたいんだ。だからうちのコーヒーはこだわりの浅煎りなんだ」
ますます理解できずにいる俺を見てさらにマスターは続けた
「砂糖とミルクを出したのにキミは使わなかっただろう? しかしうちみたいに渋みのあるコーヒーにはミルクがよく合うんだ。渋くてもミルクを入れることによりコクが増し美味しく飲めるようになる。
ミルク、つまり母親の味なんだよ。そこに砂糖を入れることによってさらに美味しく飲めるようになるんだ。そう、コーヒーとは甘酸っぱい青春そのものなのさ」
そう言うマスターの目にはうっすらと涙がうかんでいた
そこまで聞いた俺はすぐにさっきのコーヒーにミルクと砂糖を入れて飲み干すと代金を払いすぐに家に戻り母を買い物に連れていったんだ
お一人様2パックまでというたまごもおかげで4パック買うことができ母も喜んでいた
マスターが気付かせてくれなければ危うく親孝行出来ないところだったわけだ
かならずしも酸っぱいコーヒーがダメなわけではないんだよ

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