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つよしの失恋

613 :馬鹿やろうなんで貼らねーんだおめえら :2006/03/07(火) 20:54:05 ID:zn1/c9Xs
910 名前:無記無記名 投稿日:2006/03/06(月) 23:42:21 ID:WeYNJ/0M
馬鹿やろう!!
てめーら、神聖なジムをなんだと思ってるんだ!!
ジムというのはなあ、お笑いの場じゃねーんだよ!!
ジムというのは、もっと複雑で奥の深いドラマの繰り広げられる美しく、そして時にはやるせない舞台なんだよ!!
俺も勝手にここ3ヶ月ほどこの板を離れていたことだし、その理由も含め、どうやらこのことを語らなければならないときが来たようだな・・・

それは、去年の10月末のことだった。
2年ほど前にジムで知り合った、ジムのアイドル的女性との会話で、その女性がブログを書いているとの話を聞いたのである。
その女性は美容関係のブログを書き、広告収入で月に2万ほどを得ているというのだ。
アドレスを知りたいと尋ねたが、そこには彼氏にも話せないような激しい内容が書いてあるので他人には絶対教えれないとのことだった。
彼女は彼とうまくいっていないようで、12月にはいり、どうやらその恋愛も終焉を迎えたのである。
俺は以前から、なんどかその彼について相談に乗ったこともあったのだが、俺は彼女のことを好きだという思いを押し殺して、真摯にうまくその恋愛が成就するように答えていた。
彼女の彼に対する好きだという思いに反して、彼が彼女に取る冷たい態度は俺をやるせない思いにさせた。

年が明け、1月中旬になり雪の降るある日、俺はその日もジムに向かい、スクワットラックに向かった。
180kgのバーベルが俺の目の前に立ちはだかる。
バーベルを肩に担ぎ、立ち上がると、その圧倒的な圧迫感が俺の僧帽筋に襲いかかる。
俺の気合がジム内をこだまする。

 デヤァァァァァァァーー!!!!

大木のようにバルクアップされた大腿が、みているだけで苦しくなるほどの重量感のあるバーベルをしっかりと支え、びくともしないどっしりとした安定感をかもしだす。
そのどっしりとした安定感は、まさに「動かざること山の如し」と言うにふさわしいものであった。
8レプスを終え、おれは腰をかけ、休憩をしていると、例の彼女が、他の人とあのブログによる広告収入について自慢げに話しているのが聞こえてきた。
「今日は○○人が見てくれて、トータルで○○人になっている」だとか、その話し振りは得意げなものであった。
おれは、家に帰って何気なくブログがそんなに儲かるものなのか、すこしいろいろと見てみることにした。
参考までに某ブログサイトの美容カテゴリーを見てみたのである。
彼女の言っていた○○人が見ていると言うのは、そのランキングの1位に匹敵するほどの人数だった。
どんなものなのかと、1位から2位、3位と上位のブログを見ていたとき、妙に性的な描写の激しく、セミヌードの写真がふんだんに掲載されているブログを見つける。
興味深く、過去の記事もどんどん読んでいくと、次の瞬間、俺は自分の目を疑った。
そこには、明らかに例の彼女に間違いないと思わせる書き込みがされてあったのである。
そのブログには、彼女の恋愛や彼との性的な行動まで赤裸々につづられていたのである。

 こういうことか・・これなら月2万の収入も納得がいく・・

だが、俺はもちろんこのブログを見つけたことを彼女には告げなかった。
告げれば、このサイトを閉鎖へ追い込んでしまう結果になるかもしれない上、告げるメリットがまったくないからである。

614 :無記無記名 :2006/03/07(火) 20:56:20 ID:zn1/c9Xs
911 名前:無記無記名 投稿日:2006/03/06(月) 23:44:36 ID:WeYNJ/0M
それからも俺は毎日のように、ジムに通っていたが、日増しに彼女のブログ自慢がエスカレートしていった。

 このままでは他の誰かにも気づかれてしまうかもしれない・・・

そう思った俺は、トレーニングが終わってジムを出たときに、彼女に、ブログの件はあまり話さないほうがいいと伝える。
当然のように恐れていた質問が帰ってきた。

 「なんで?」

俺はこう答えた。

 俺「あまり詳しく話すとどのブログなのか特定されてしまうことがあるんですよ。」
 彼女「え?!誰かに見つかってしまったのですか?」
 俺「それは聞かないほうがいいかも・・・でも、いまならまだ大丈夫だと思う。」
 彼女「是非教えてください、ききたいです。」
 俺「実は・・・それはぼくなんです。」

それから、俺はそのブログにたどり着いたいきさつを話した。
だが、そのことは絶対他言しないし、僕はもうそのブログは見ないので、せっかく収入がそこまでになっているなら続けてくださいと告げた。
彼女は、26歳で東京に一人で最近出てきて派遣OLをやっていた。
物価が高い東京で生きていくために、水商売をしようかという相談を受けたこともあったが、止めといたほうがいいと俺はアドバイスをしたことがあった。
このブログは、自分が生活していくために知恵を振り絞って考えた結果だとすぐに分かったので、このブログを閉鎖に追いやってしまうことは心が痛むのであった。
だが、以前からライバルは多いものの、彼女から好印象を受けていて、あるていど信頼されていたおれのその言葉を信じ、彼女はブログを続けていくと言ったのである。
その二日後であった。その日も俺はジムに向かうと、ジムに入った瞬間、彼女が誰かと話す声が聞こえてきた。

 「実は最近、ある秘密をある人に知られてしまって悩んでるんです・・」

俺がジム内に入った時に聞いた一言がそれだったのだ。
彼女はすぐさま、あわてたように話題を変え始めた。
俺は一瞬でその話が、例のブログの話だと悟った。
おれは、胸に重くのしかかる得体の知れない重量感を感じながらトレーニングをせずそのまま、ジムを去った。
走る俺の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

 俺は何をやっているんだ・・・
 彼女を他の人から守るためにやった行動が、逆に彼女を苦しめているじゃないか・・・

切なくてやるせない思いと重苦しさが体中に充満していた。
そのまま、俺はそこでしゃがみこみ、どうすればいいのかを考えた。
ひとつの結論が俺の頭によぎった。
それは、ブログを見つけてしまったことを告げたあの日、うすうすこうなるんじゃないかと感じていたどうしても選択したくない選択肢であった。
だが、方法はこれしかなかった。
その時、家族のために死ぬまで働きぬき、病死した俺の父の言葉が頭をよぎったのである。

 「つよし、この世で一番強いのは力でも権力でもお金でもない、
  それは誠実でまっすぐで、けして折れることのない強い心なんだ。
  その心さえあれば、鍛えて力をつけることもできるし、お金を稼ぐとも簡単だ。
  だから、ぜったいに心だけは穢れてしまっては駄目だぞ。」


615 :無記無記名 :2006/03/07(火) 20:59:34 ID:zn1/c9Xs
912 名前:無記無記名 投稿日:2006/03/06(月) 23:47:38 ID:WeYNJ/0M
俺は意を決して彼女に電話をかけた。
その会話は今でも正確に克明に覚えている。

  俺「先ほどジムで話されていた悩みって、例のブログの件ですよね?でも安心してください、
    ぼくは誰にもあのことを言っていないし、これからも言いません。
    それと、もうひとつ、ぼくはこのジムを去ろうと思います。」
  彼女「ええええええええええええ!!やめないで!」
  俺「さよなら」彼女「私は平気ですから」俺「幸せになってくださいね」
  彼女「なんか・・・うまく・・ちょっとまって・・私、申し訳ないです・・なんていっていいか・・」
  俺「いえ少し嘘をついたこともあって・・・」彼女「うそ?・・・いいたくなければ言わなくてもいいです。」
  俺「絶対に見ないって言ったのに今日も少し出来心で見てしまいました」
  彼女「ははは、それは想定の範囲内ですから見守っていてください。」俺「これからも頑張ってくださいね、では・・」

電話を切ろうとするが、次々と言葉をはさんでくる。

  彼女「あのー、ブログをみてもかまわないですから、私の相談相手になってもらえませんか。」
  俺「ぼくはそういうのは嫌なんです、誠実でいたいので、隠れてみるような真似はしたくないんです。」
  俺「うそとか隠し事とかって嫌なので。」彼女「じゃあ堂々と見たらいいですよ、何も嘘をつくことはないよ」
  俺「そういうのも嫌なんです、覗き見みたいで。」彼女「覗き見になるのはしょうがないですよ、インターネットだから・・」
  俺「ぼくもあなたのいないところでまた頑張りたいと思います。お互いにあったこともない他人でいましょう」
  俺「今までありがとう、じゃあ・・」
  彼女「まって!私はわがままですか?つよしさんそんなに嫌なの?ちょっと潔癖すぎるよ
    分かるよ、いろいろ考えたの、誠実であることを考えると絶対に私のことを・・えーと・・」
  俺「いつかはジムを止めるのですから、どうせやめるなら誰かの役に立って辞める方がいいと思うので,ちょうどいい機会なんです。」
  彼女「違うよ、やめなくたって・・トレーニング楽しいでしょ?他の人に見られてたなら私、ブログやめてたよ。
    つよしさんだから続けようと思ったんです。」
  俺「ごめんなさい、決心が揺らぐのでもう切ります、ありがとう」

俺はすぐにジムを辞め、携帯を変えて彼女との接点を完全に断った。
ひとつの恋愛は片思いという形で終わったのである。
トレーニングはしばらくすることはないであろう、だがしかし、トレーニングに対する強くて折れない心は、けして折れたわけではない。
いつか、この絶望感から回復したとき、また燃えるような闘志と共にバーベルを握る日が来るのはそう遠い話ではないのである。

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